哲学者と少年の一週間

ベルリンスクール・モジュール4のフィナーレは
Washington Olivettoでした。
Washingtonはブラジルの広告会社W/Brasilを
創設し、ブラジル広告界のゴッドファーザー
ひとりとして、サッカーのペレ、F1のセナと同じくらい
尊敬されている人です(写真)。
僕はWashingtonが作った週刊誌Epocaのテレビコマーシャル
"The Week"がこれまで見たすべての広告の中で
一番と言っていいくらい好きです。
一週間という時間をさまざまな視点で切り取ったナレーションが
ボイスコーダーを通したような音楽的な声で流れます。
「一週間は金持ちにとっては7回の晩さんであり、
貧乏人にとっては7回の飢えである」
「一週間は犬にとっては49日であり、
ハエにとっては一世代である」
「一週間はインフルエンザに罹った者には治癒であり、
花瓶にいけられたバラにとっては死である」などと続き、
最後に「一週間は宇宙にとって無であり、
エポカ(週刊誌のタイトル)にとってすべてである」。
Washington自身の言葉によれば、
「このコマーシャルは『洗練された洞察』である。
エポカはひとつの主張を押し付ける雑誌でなく、
常にふたつの視点を読者に提供する雑誌であることから、
このコマーシャルが生まれた」。
素晴らしい。なんて美しく知的なんだろう。
最後に彼が僕たちにくれた言葉は
"It's advertising, but it's not just advertising."
(たかが広告、されど広告)でした。
「近頃の広告業界の人間は広告にどっぷりつかりすぎている。
自分は人生や人間や音楽により興味を持っている」。
ピンク色のシャツと黒いジャケットを小粋に着こなす、
哲学者と少年が同時に棲んでいるチャーミングな人でした。
ふと気づくと、談笑しているときにとなりの女性の手を
握っています。確かに、人生を楽しんでおられる。
次のベルリンスクールは10月の東京、モジュール5です。
"The Week"はYouTubeに行けば見られるはずです。
"Epoca""The Week"のタグで探してみてください。