花咲くアジア、支える笑顔

第11回アドフェストが閉幕した。
最多の1600人を越える参加者があった。
アドフェストではタイ、日本、シンガポール、インドなどが
広告賞の入賞数でリードしてきた。
今年はマレーシア、フィリピン、中国、インドネシアスリランカ
といったこれまであまり目立たなかった国の入賞が印象的だった。
こうした国の広告制作者たちはアドフェストの水準に狙いをさだめ
技術を磨き、チームを励まし、クライアントを説得してきた。
その集積が2008年に花開きはじめたことが
僕には一番印象的だった。
登壇する人たちも本当に嬉しそうで、
苦労が報われたことが表情や動作から感じられる。
応募作品全体としては
カンヌの流れを模倣したパターンも相変わらず多い。
一方でローカルの、人と土地と文化から生まれた表現、アイデア
共存している。そうした混沌が僕にはおもしろかった。
広告は文化と経済と人間とがチャンポンとなったあたりから
ふつふつと生まれてくる。
広告を作るとき、広告を作ろうと思ってはいけないというのは
おそらくそういう意味なんだろうと僕は考える。
アドフェストやカンヌにやってくると
最後の二日間くらいはいつもうまく寝つけない。
人間や表現や、その背後にある経済や社会や心理のことなど
あれこれ考えて神経が少し高ぶるせいなのかもしれない。
神経が高ぶるということは
僕の中のなにかが反応しているしるしなのだ。
それが生きていることであり、
現役で仕事をしている証しなのだと思う。
仕事をリタイヤしたら
余暇でこうした広告フェスティバルに来たいとは
僕は思わないだろう。
写真の女性は僕をはじめ審査員の面倒を見てくれたNatさん。
おそらく期間中わずらわしいことだらけだろうに
Natさんのイライラした顔、暗い顔は一度も見ることがなかった。
こういう人たちの情熱が
NPOのアドフェストを支えているのだ。