アヘン戦争と英国の影

陳舜臣「実録アヘン戦争」(中公文庫)を読む。
阿川弘之さんが「文藝春秋」所載
「英国の光と影」と題した文で
会田雄次「アーロン収容所」とともに
紹介していた本だ。
どちらも英国の影を精密に描写した
ノンフィクションである。

実録アヘン戦争 (中公文庫)

実録アヘン戦争 (中公文庫)

アヘンの輸出を続けるために
戦争を起こした英国。
その英国に対する満人の国、清の中華思想
歴史の激動に生きた林則徐という人物。
おもしろくて一気に読んでしまった。
英国が異民族交渉や支配にたけた国であることが
よく分かる。
そのためには屁理屈を論理と言語によって
たくみに武装する技術を活用する。
英国とは英国人とはと
安易に一般化することは危険であるが、
この二冊によって英国の影を理解する
手がかりが得られる。
どんな国家も光だけで構成されるわけもない。
それは歴史が証明している。
ひとつの文章を読むことから派生的に
こうした過去の名作に出会えるとなんともうれしい。
阿川さんに感謝したい。
きっかけがないと
名作もタイトルを知っているだけで
自分で手にして読む機会がない。
「実録アヘン戦争」は
1971年、毎日出版文化賞
陳舜臣の他の作品も読みたくなった。