伊坂幸太郎「グラスホッパー」を読む。
僕の三冊目。直木賞ノミネート作品。
鯨、蝉、鈴木、
三人の視点で物語をパラレルに語っていくのは
伊坂独特の映画的手法である。
殺人あり、詐欺あり、拷問ありと
ハードボイルドの筆が冴えるが、
読後感が悪くないのは
ユーモアがそこここに散りばめられているからだ。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2007/06/23
- メディア: 文庫
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それまでバラバラに提示してきた断片が
ラストに向かって一つのピースを構成していく。
すべての要素がエンディングに集結し、
ユーモアとともに余韻を残す。
この心地よさ、スピード感は僕にとって
向田邦子のエッセイを読むときの
読後感に似ている。
数学的構成を持つ文学とでも言うのか。
「ゴールデンスランバー」に登場した
未来を知るカカシがこの作品ではチョイ役で出てくる。
こうした方法は映画のキャスティングのようであり、
手塚治虫の作品にも共通している。
ヒゲオヤジ、ヒョウタンツギが
手塚の複数の作品に登場するのも
こうしたスターシステムの産物である。
伊坂の作品は映画的であるが、
読者としては映画にはしてほしくない気がする。
きっと多くの読者がそう思っているだろう。
説明的に映像で見せられてしまっては
せっかく頭の中で組み立てた物語がだいなしだ。
マレーシアかシンガポールだったか、
書店のポスター広告にこんなキャッチフレーズがあった。
「ハリウッドがダメにする前に読んでおきなさい」。
(文中敬称略)
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写真は土日と
二日連続で来てくれたおとぼけくん。
(©同居人)