ベルリンスクール入門(その6)

さて、きょうは昨日の続き、
モジュール1の残りの8日間のカリキュラムを
紹介していくことにする。


第7日 戦略論1(Paul Verdin)
第8日 戦略論2(Paul Verdin)
   

   ウォルマート、EMIなどのケーススタディを使って


第9日  リーダーシップの基本1
第10日 リーダーシップの基本2
第11日 リーダーシップの基本3
    (Pierre Casse, Eoin Banahan, Clarisse Hoffmann)


   「自分をリードする」のテーマで
    ワークショップ。グループ演習が中心。


第12日 革新を生むリーダーシップ
     (Jean Deschamps)

 
    デザインカンパニーIDEO、IMDによる企業トップ
    インタビュービデオを教材に使って


第13日 チームプロジェクト/卒業論文の進捗報告
    (Pierre Casse, Michael Conrad, Eoin Banahan)


    EMBAの必須課目であるチームプロジェクト、
    卒業論文について、それぞれグループ、個人から報告。
    ブラッシュアップや方向転換のための
    アドバイスをもらう。


第14日 メディアと社会 (Klaus Schoenbach)


    説得のための戦略・戦術概論


ここまででモジュール1「自分をリードする」が終了する。
卒業まではこうしたクラスが三ヶ月ごとにあと66日続く。
知的トライアスロン、もしくは知的拷問(マイケルの命名
とこのカリキュラムを呼ぶ意味が分かってもらえただろうか。
脅かすのが目的では決してないが、
ベルリンスクールに興味を持ってくれた人たちに
まずは事実を伝えておきたいのだ。


アカデミズムの教授たちは
大学やビジネススクールでクラスを持つ他、
企業のコンサルタントをしていたり、
自分で会社を持ちビジネスをしている人がほとんどだ。
したがって、教授たちのレクチャーを
象牙の塔の机上理論」と批判するのは当たらない。
批判したければ、個別の内容について異論を唱え、
なぜ自分が違う意見を持つか、教授に挑めばいいだけの話だ。


まして、15名の参加者たちは
コミュニケーション・ビジネスの最前線で
現在もリーダーを務めている人間である。
常にクラスはインタラクティブになり、
「自分ならどうするか」
「自分たちは過去から現在までどうしてきたか」
がディスカッションの対象になる。
ここでは発言しないことは許されない。
「君はどう思うんだ」
「君ならどうするんだ」
「なぜだ」


普段自分がさまざまなことに対して
意見を留保していたり、思考を停止していることが
あからさまになっていく。
こうしたやりとりはカンヌ国際広告賞をはじめ
国際広告賞の審査員を務めたときに体験したこととも
共通点がある。
むしろ、意見の異なる大人たちが結論を見出すためには
当たり前のプロセスなのだろう。
意見がぶつかることは人格の否定とはまったく関係がない
と信じるルールである。


日本で暮らし仕事しているときとはまったく異なる環境に
突然放り出されることになる。
クラスに日本人が僕ひとりであることは
むしろ覚悟が決まっていい。
甘えようとしても甘える場所がない方がいっそ思い切れる。
僕はそのことを幸運と考えた。


自分ひとりのクリエイティブ・スキルを向上させたい人たちは
ベルリンスクールでない別の場所を探すべきだろう。
自分がリードするチーム、会社を持ち、
これまでのリーダーシップと異なる、
創造性を骨格に持つリーダーシップの獲得をめざす人たちの
カリキュラムがベルリンスクールである。


「自分は本当にリーダーなんだろうか」
「自分のリーダーシップを創造的に向上させるには
 具体的にどうしたらいいんだろうか」


僕の中では疑問が激しく渦巻く。


「そもそも自分はクリエイティブ・リーダーシップを
 最終的に手に入れることができるんだろうか」


クリエイティブ・リーダーシップの名を持つ学校に通ったから
クリエイティブ・リーダーシップが獲得できるわけでもない。
そもそもリーダーシップは他人から学校で学ぶものなのか。
未来への希望と不安を抱えて
僕は「空飛ぶ大学」に通い続けた。


結論を先に言っておけば、
ベルリンスクールでクリエイティブ・リーダーシップを獲得できる。
僕をはじめ、卒業した一期生全員の意見である。
ただし、すべては自分次第だ。
なにを学ぶかは自分が決める。


そして自分がクリエイティブ・リーダーシップを手に入れたかどうか
確認するのは簡単だ。
自分がリードする部下全員に質問したらいい。
答えはそこにある。
ただし、人はウソもつき、お世辞も言う動物だから
充分注意して判断するべきだ。
まして、自分は彼らの上司なんだから。


答えは言葉だけでなく、彼らの行動の変化が示してくれるだろう。
もし彼らの行動にひとつも変化がなかったのなら、
自分への賛辞はすべてウソかお世辞だったことになる。
自分の姿は部下たちの鏡に映っている。
恐ろしいことだ。
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写真はベルリン市内の劇場で
即興演劇のセッションのための準備をする
コンラッド学長と参加者。
この後、全員の前で5分ほどの即興劇を
披露することになっている。
ビジネスの判断における即興力の重要さを学ぶための
カリキュラムの一部である。


スイス・ローザンヌ大学ビジネス・経済学部長の
女性教授Suzanne de Trevilleが
ベルリンスクールのためにオリジナルで開発した。
Suzanneのオペレーション・マネジメント概論は
僕がもっとも気に入り、評価しているクラスの一つだ。
過激なまでにクリエイティブであるのだ。