映像職人、市川準の目線



市川準さんのお別れの会がありました。
9月19日に急逝したCMディレクター/映画監督です。
900人が集まりました。



CMディレクターとしての準さんは
いくつかの記憶に残る名作を残しました。
映画監督としての準さんは
着実に21本を監督し、
一定数の市川準ファンの期待にいつも応えてきました。



準さんが世界の30人の映画監督に選ばれることは
たぶんないだろうけれど、
僕たちと同じような目線で、
人間の営み、物語をフィルムに定着してきた
映像職人の代表選手であることは間違いありません。


映画の世界に行っても
広告の世界に必ず帰ってきてくれた監督です。
準さんが映画の仕事と同じように
広告の仕事を変わらず愛してきた証しです。



僕も自分の企画を一本だけ演出してもらったことがあります。
当時も当然売れっ子で、
おそらく睡眠時間も削っていたに違いなかった準さんが
一心にお願いする僕とプロデューサーのMさんの熱意に負けて
仕事を引き受けてくれたのでした。


若者たちに憧れられ、
ベテランたちに頼りにされる職人たちが随所にいなければ
広告づくりも映画づくりも満足にできません。
準さんはそうした職人たちの頂点にいた人です。
矜持を持ちながら、頂点にいることをひけらかさなかった人です。



帰り道、友人たちと一杯やりながら
よもやま話に花を咲かせました。
ちょうどニューヨークから一時帰国している、
僕のかつての部下Tくんにも会ったので声をかけました。



みんなで飲んだのは、
まるで準さんの映画でロケセットに使いたくなるような
いまにも倒れそうな店でした。
僕たちは映画のガヤ(その他大勢の役)を演じるように
その店のカウンタ−で時間を過ごしました。


このショットに
監督・市川準のOKがもらえるかどうかは分かりません。
ワンカット、長回しです。
カメラはまだ回っています。