小川隆之 New York Is


僕が駆け出しの頃、仕事を教えてくれた人が
今年はひとり、またひとりと亡くなった。
鈴木理雄さん、そして小川隆之さん。


カメラマンの小川隆之さんを偲ぶ会に顔を出した。
10月8日に72歳で旅立った。



シナリオハンティングから始める広告の仕事で
数年ご一緒した。
撮影や照明がなんであるかもろくろく知らなかった若造と
真っ正面から付き合ってくださった。
年齢も経験も違うのに、若造に説教するのは嫌いだった。


日本酒のチェイサーに緑茶を頼む小川さんを見て
大人は不思議なことをするんだなと思っていた。
いまでは僕もときどき真似をする。
一緒にこしらえたウィスキーの広告で
雪見を楽しむ後ろ姿のシルエットが小川さんだった。




20代の仕事『New York Is』を
この夜の偲ぶ会で初めて見せていただいた。
これらの作品がいまでもみずみずしいのはどういうわけだろう。


僕もあれから仕事で何度かニューヨークに行き、
独特の緊張感を持つあの街が気に入った。
小川さんがカメラひとつ抱えて
ニューヨーク相手に格闘を続けていた20代の日々が目に浮かんだ。



僕が小川さんに初めて出会ったのは27歳のときだった。
テレビコマーシャルの面白さ、難しさが
ようやく分かりはじめた頃だった。
僕も格闘していたが、
そんな若造を小川さんはおべんちゃらを言うこともなく
優しい目で応援してくれていた、と思う。
背中で教えてくれた先輩であった。