言葉たちが再生する夜


コピーライターたちが
あるテーマを題材に原稿を書く。
その原稿を三人のナレーター/役者たちが、
100人ほどの観客を前にライブで朗読する。
ピアノの生演奏か、あらかじめ選曲された音楽が背後に流される。
ブースに陣取るミキサーが声と音楽を重ねてゆく。



シンプルで実験的な舞台、
昨年6月に好評だった
Tokyo Copywriters' Street Live のVol.2が
昨夜、渋谷のライブハウスJZ Bratで開催された。



12の作品、11の短編は
すべてコピーライターたちの手になるものだ。
特攻をテーマにしたドキュメンタリー風の作品あり、
人生相談のスタイルをとった風刺の効いた作品あり、
潜在的ストーカーとでも呼べそうな
片想いの女性を描いた作品あり、多彩多様だ。




才能あるコピーライターたちは
鋳型にはめられた昨今の広告の領域で
どうやら退屈しているようだ。
世の中、情報は氾濫しているが、
みんな、肉声には飢えている。


人の心の奥にまで届く言葉たちが
優れた広告には必ず存在してきた。
けれど、このところの数値重視やら、
投資効果やらのかけ声の中で
すっかり息を潜めてしまったかのようだ。



しかし、言葉たちは
自分が死んだのではないことを証明するように、
この夜、訥々と、ひょうひょうと、怪しげに、シニカルに
舞台空間を飛び交っていた。


どんな時代も、
言葉を檻に閉じ込めることはできようとも
言葉を殺し尽くすことはできない。
書き手、読み手、聴き手が響き合うとき、
言葉たちは原始の力を取り戻し、再生する。



この実験的試みが、
シンプル、かつラディカルであり続けることを止めずに
継続されてゆくといい。
毎週放送されている同名の番組、
Tokyo Copywriters' Streetでも
コピーライターたちが操る言葉の力を味わうことができる。


(TokyoFMで毎週木曜21時20分から放送)