世の中の物語は
語り尽くされているかのように見える時もあるのに
どうして人は物語を求めるのだろう。
休暇を利用して同居人のライブラリーからDVDを借りて観る。
邦画では熊井啓監督の「日本列島」(1965)
「日本の黒い夏 冤罪」(2000)「帝銀事件死刑囚」(1964)。
熊井監督は一貫して社会的テーマに映画で挑んでいる。
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駐留米軍の背後にいる組織を扱った「日本列島」の宇野重吉、
松本サリン事件を扱った「日本の黒い夏 冤罪」の寺尾聡。
親子で熊井作品の主役を張っているのを見比べるのも面白い。
いずれの作品にも推理するエンターテインメントが
ふんだんに散りばめられていて少しも退屈することがない。
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洋画では元旦の「ふたりのベロニカ」に続いて、
クシシュトフ・キェシロフスキ監督の「トリコロール/赤の愛」(1994)、
「デカローグ」(1988) から
「ある運命に関する物語」「ある選択に関する物語」。
映像と音楽で物語を語り、言語で説明しすぎない名作である。
(この冬は我が家の柚子も豊作だ。柚子風呂がうれしい)
キェシロフスキ監督は東京でのインタビューで、
「映画は人生を覗き見するものである」
「人々を隔てるものが数多い中で、人と人を結びつけるものが大切だ。
喜び、悲しみ、痛みなどは人に共通する感情だ」と話している。
(葉を落とした木に雀たちが集まって会議中。
この世界的不況をどう乗り切るか、知恵を絞り合う?)
人間は単独では生きられない社会的動物である。
同時に、他人や組織、国家の束縛から
できるだけ自由にありたいと願望する一面も持っている。
これまでたまたま自分が聴くことのなかった物語に耳を傾けるには
それだけの時間をまかなえる長期休暇は絶好の機会に思える。
世界には僕たちが関心を持つことを待っている物語がある。