「ふたりのベロニカ 」(1991)


正月二日の午前中と言えば朝風呂である。
秘湯会のホームグラウンド、井戸水銭湯E湯に出かける。
晦日やら二日の朝風呂やらは
普段来ない客が来ていて普段より混雑している。
親子も見かける。これでよい。
身近な銭湯が廃業しないためには、新規顧客の開拓が鍵である。



  (地元の庭園土木業「ガハハのおじさん」が飼う烏骨鶏
   正月も元気である)


三が日は近所を歩いていても静寂そのものである。
昼のうちはまだ陽の光があるから寒くても気持ちにゆとりがある。



昨夜は、クシシュトフ・キェシロフスキ監督の
ふたりのベロニカ」を観る。
ポーランドとフランスに生まれたふたり(イレーヌ・ジャコブの二役)が
お互いの存在をテレパシーのような感覚で知覚する。
ふたりの接点は一度だけポーランドであるが、
そのときパリのベロニカは、ワルシャワのベロニカには気づかない。
ブルース・シュウォーツの人形劇と
人形つかいの男が物語の狂言回しとなる。


音楽も撮影も素晴らしい。
ベッドシーンも美しく、濡れ場はこんなふうに撮ればいいんだな、
と少し職業的視点で眺めてみる。



  (この巨大なカメがなんで置いてあるのか不思議に思う)


93年の暮れから94年の正月にかけて
ロンドンの友人とポーランドを旅したことがあった。
ふとした幸運でポーランドの友人の家に泊めてもらい数日を過ごした。
ワルシャワから列車で東に200km、現在のベラルーシ国境近く、
チェレンハという小さな街だ。
中途、チェレンハよりかなり大きな街、ルブリンで
友人の友人の家に一晩泊めてもらい、
そのときナチスが使っていた強制収容所も案内してもらった。



16年前の旅の記憶が
この映画の一シーン一シーンと重なってくる。
こうした傑作と向き合うのに年末年始の休暇はふさわしい。
2010年最初の映画作品としていいものを観せてもらった。
イレーヌはこの作品で1991年カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した。


  wikipedia:en:Krzysztof Kieslowski
  wikipedia:en:Irene Jacob