タイトルのよさに惹かれて
久しぶりに城山三郎のエッセイを手にした。
以下、僕が読んだ順である。
城山三郎『どうせ、あちらへは手ぶらで行く』(2009/2011文庫版)
城山三郎『そうか、もう君はいないのか』(2008/2010文庫版)
井上紀子『父でもなく、城山三郎でもなく』(2008/2011文庫版)
城山三郎『無所属の時間で生きる』(1999/2008文庫版)
- 作者: 城山三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/07/28
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井上紀子は城山三郎の次女であり、
城山の妻・容子が亡くなった後は
城山にもっとも近い場所で仕事、生活を支えた。
井上の本は父・杉浦英一(城山の本名)と暮らした日々を
追憶した書である。
- 作者: 城山三郎
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若い頃「運・鈍・根」という言葉に出会い、
「運」と「根」については分かった気がするが、
どうして真ん中の文字は「鋭」でなく
「鈍」なのだろうと疑問に思っていた。
人間は鈍いより鋭い方がいいに決まっているではないか
と思い込んでいたのかもしれない。
- 作者: 井上紀子
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城山の座右の銘のひとつに「鈍・鈍・楽」がある。
孫娘、裕子が登校拒否に苦しんでいたときも、
激励でもなく教訓でもなく、ただこの言葉をそっと贈った。
城山本人も認めているように「不器用」な人である。
しかし、おのれの戦争体験に基づき執筆を始めた作家は
「不器用」であるからこそ仕事を、作品を残した。
- 作者: 城山三郎
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手先が器用な人はおおいにうらやましいが、
生き方があまりに器用な人はうらやましいとは思わなくなった。
若い頃に魅力に感じなかった「鈍」の文字に
なんとも滋味のある味わいを感じるようになった。
(文中敬称略)