宮部みゆき『おまえさん』(上・下)(2011)


宮部みゆき『おまえさん』(上・下)(2011)を読む。
江戸を舞台にしたミステリーシリーズ、
『ぼんくら』『日暮らし』に続く第三作である。


おまえさん(上) (講談社文庫)

おまえさん(上) (講談社文庫)

おまえさん(下) (講談社文庫)

おまえさん(下) (講談社文庫)


町方役人・井筒平四郎、その甥の弓之助、
弓之助の朋友、おでここと三太郎の三人の掛け合いが絶妙である。
この三人を中心に脇を固める登場人物が数人いて、
江戸の町で起こる謎に挑戦していくのだ。



宮部のこのシリーズには肩のこらぬ面白みが随所にあり、
物語を追ううちに頭も身体もほぐれていく。
湯舟につかっているような、マッサージを受けているような、
α波を発する読書感覚があるのだ。



『おまえさん』は単行本、文庫を同時発売した。
こうした思い切った企画を出版社はどしどしやった方がいい。
どんな手を使っても活字から離れた読者を呼び戻すのが先決だ。
一度読んだらやめられぬ人気作家の作品は
そうした読書人口開拓のための最高の武器になりうる。
読み終えてすぐ続篇が読みたくなるのがただひとつ困ることだ。



(文中敬称略)