『紫禁城の栄光ー明・清全史』(1968単行本/2006文庫版)


2011年9月に瀋陽を訪れて以来、
国史は僕の読書テーマの柱のひとつである。
岡田英弘/神田信夫/松村潤『紫禁城の栄光』(2006文庫版)を読む。
元から明、清に至る450年の読みやすい通史である。


紫禁城の栄光―明・清全史 (講談社学術文庫)

紫禁城の栄光―明・清全史 (講談社学術文庫)


知らずに読めば三人の共著であることすら気にならない。
岡田、神田、松村の三人は清朝初期の歴史を満洲語で記した
『満文老檔(ろうとう)』訳注で
1957年に日本学士院賞を受賞したチームである。



清帝国を玉葱に例える。
一番外側の層はシナ、満洲、モンゴル、新疆、チベットで構成される。
次々に皮を剝いてゆくと
最後の最後にヌルハチの出身・建州衛が現れる構造だ。
現在の中華人民共和国を理解しようとするときにも、
こうした洞察が案外役立つのだ。



38年ぶりに文庫として復刊。
単行本として出版されてから45年経つ。
60年代後半にこうした著作を発表しているのだから
学者の仕事は短期では評価できない。
こじれたままの日中関係の落としどころを探るにも
大人たちが歴史を学ぶことが不可欠である。
中学高校の歴史授業で大幅に不足している点でもある。



(文中敬称略)