小谷(おたり)温泉、熱泉荘に泊まる


ハエタロウの最期を看取って
同居人も僕も虚脱状態が続いている。
力の限り生きた猫だったから
それ以上望むのはいくら飼い主でも酷だと分かっている。
でも、ポッカリ空いた穴は理屈では埋まらない。



副会長にお願いして愛車アルファロメオ
温泉に連れていってもらうことにした。
こんなとき、まっさきに頭に浮かぶのは
小谷(おたり)温泉である。
信州の北のはずれの山奥にあり、
山を越えれば日本海だ。



僕の勘違いと思い込みで定宿の山田旅館ではなく、
初めての熱泉荘に宿泊することになった。
そうでなければ一生泊まらなかったと思うが、
湯といい宿のもてなしといい、満足した。



一泊二食で8,500円。
秘湯会は10,000円前後の山の宿に泊まることを望むが、
この頃では宿代が値上がりしそれが難しい。
熱泉荘は部屋、食事に粗末なところが少しもなく
70℃の源泉を守り、この値段で客を泊めている。
11月から4月までは3メートルも積もる雪で
ほとんど開店休業だと手伝いのおばちゃんOさんが言う。



湯につかり酒を飲み、晩ご飯をいただいたら
後は横になってコトン。そのまま12時間眠った。
「それだけ眠れる体力が凄い」
と副会長、同居人にからかわれたが返す言葉もない。
目の下にクマができて、まだ眠い。