グラム300円の実力


この町から嫁に行ったお嬢さんが
味を忘れられなくて注文してくる、と店のおばさんが言う。
徳島市内にある前田精肉店の牛肉である。
所用があって里帰りした同居人の土産だ。
牛肉が高くてうまいのは当たり前。
前田の実力はグラム300円の日常使いの肉の旨さに表れる。



焼き豆腐、同郷の阿波九条ネギを買ってきて、
池波正太郎先生風のすき焼き小鍋立て。
なるほど、徳島のお嫁さんが
味覚と財布で故郷を記憶する理由がよく分かる。



   (大王「ちっ、能書き垂れてないで、
       オレにもちっと食わせろよ」)