本田靖春『我、拗ね者として生涯を閉ず』(2005)


不器用で硬骨漢の新聞記者が
かつて読売新聞社会部にいたんだなと知った。
本田靖春『我、拗ね者として生涯を閉ず』を読む。


我、拗ね者として生涯を閉ず

我、拗ね者として生涯を閉ず


戦後のある時期まで、確かに新聞は元気だった。
それは憲法が保証した言論の自由とおおいに関係があった。
本田は60年代後半から社会部の後退、
新聞の活力がなくなる時代が始まったと本書に記す。


社主正力松太郎への社内の服従姿勢が
読売退社の大きな動機になった。
世に言論の自由を問う新聞記者が
社内で物言わず、長いものに巻かれるようでは話にならない、
と勝ち目の少ない闘いに挑んで啖呵を切る。



フリーランスになり貧乏生活を送っていても
硬骨漢の姿勢はぶれなかった。
自分の才能を高く買った文藝春秋田中健五を敬愛しながらも
思想的に同一と見られることを嫌い距離を取る。
本書は絶筆として最終回未完のまま講談社から出版された。
拗ね者としての自分を受け入れた講談社の面々に対する
本田の信頼は最後まで変わらなかった。


我、拗ね者として生涯を閉ず(上) (講談社文庫)

我、拗ね者として生涯を閉ず(上) (講談社文庫)

我、拗ね者として生涯を閉ず(下) (講談社文庫)

我、拗ね者として生涯を閉ず(下) (講談社文庫)


メディアの仕事を志す若者に一読を勧める。
既に文庫上下二冊になっている。


wikipedia:本田靖春