『イミテーション・ゲーム』(2014)


社会はどうして同性愛というだけで
自分たちの未来を救った天才を自殺に追い込んでしまうのか。
『イミテーション・ゲーム—エニグマと天才数学者の秘密』(2014)を見る。



主人公のアラン・チューリング
舞台となったイギリスのブレチャリー・パーク。
なんだか懐かしいように馴染むのは
2014年にCoursera講座でインターネットの歴史を学んだからだ。
(Dr.Chuck "Internet History, Technology, Security" University of Michigan)


ナチスの暗号システム「エニグマ」を解読しなくては
ナチスの進撃を止めることはできない。
チャーチル率いる英国は陥落寸前まで追い詰められた。



  (暗号解読機。後に「チューリング・マシーン」に進化)


数学者アランと彼の解読機はナチス通信係の女性たちの、
人間ならではの油断によって書いたコード解読をきっかけに
エニグマ」の難攻不落の壁を突破する。
天才にありがちな率直かつ偏屈な性格のアランを演じたのは
英国のテレビドラマ『シャーロック』(傑作!)の
ベネディクト・カンバーバッチ


アランがいなければ、
アランと彼のチームがチャーチルの支援を受けて
エニグマ」の暗号を解読できなければ、
ナチスがヨーロッパを支配していた可能性は高い。


アランたちの暗号解読機は
現在のインターネットを生む母体のひとつにもなった。
その後「チューリング・マシーン」が開発されていなかったなら
インターネットの歴史も
いまとは異なるものになっていたに違いない。



  (ギルバート・ベイカーデザインのレインボー・フラッグ。
   LGBT活動の象徴として使用されている)


そんなアランを人々は国家は
同性愛であることを理由に化学的去勢を選ばせる。
1年後、アランは41歳で自殺する。
LGBTレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の
活動、認知が高まり、法制度を変える国も出てきた現代なら
アランにも去勢されたり自殺する以外の選択もあったろう。


当時の社会を、そしていまも多くの社会で
人々の思考・行動を支配しているのは宗教である。
カトリックは同性愛を「悪魔の所業」と考える。
「天才」「悪魔」。
正反対の判断を人間にさせてしまう宗教の力、存在とは
いったいなんなのだろうと、この作品を見て思った。


Alan Turing: The Enigma: The Book That Inspired the Film

Alan Turing: The Enigma: The Book That Inspired the Film "The Imitation Game"


第87回アカデミー賞脚色賞受賞(グレアム・ムーア)。
原作はアンドリュー・ホッジス『Alan Turing: Enigma』。


wikipedia:en:alan turing