宇野弘蔵『経済原論』(1964/2016文庫版)


ゴツゴツした文章を読み進むうちに
「あれ、なんだか『資本論』のエッセンスが
分かってきた気がするぞ」と思える瞬間が何度かあった。
宇野弘蔵『経済原論』を読む。


経済原論 (岩波文庫)

経済原論 (岩波文庫)


資本論』全3巻は文庫本だと全9冊。
そのエッセンスを250頁の文庫にまとめ、
なおかつ24の問題点を列挙する。
資本論』の内容は一字一句たりとも疑うべからず、
とするマルクス主義経済学者を宇野は痛烈に批判する。
例え天才マルクスと言えど、
間違えもするし、議論が不充分な箇所もある。
それを読み解くことこそ真にマルクスを現代に活かす道だ、
と宇野は説く。



  (宇野弘蔵Wikipediaより引用)


とは言え、宇野の文章は決して読みやすいとは言えない。
あちらでゴツン、こちらでゴツンとぶつかりながら
理解できない箇所は飛ばしてでも通読するうちに
資本論』の一番伝えたいことが染み込んでくる気がする。
まるでスルメだね。


内容を一文には要約できないけれども、
自分が生きている時代を『資本論』のレンズで眺めると
見晴らしがよくなった感じがする。
なぜ給料が上がらないのか。
なぜ大企業はグローバル化をめざすのか。
自分なりの答えが見つかる。


1964年、東京オリンピックの年に
岩波全書として出版。
52年後に文庫で甦った。
宇野が昭和33年以来法政大学社会学部で
講義してきたのが『経済原論』だ。



wikipedia:宇野弘蔵


(文中敬称略)