週末のテンプラ

写真は徳島駅のそばにある店、水穂のテンプラ。
ベルリンスクールから僕が帰る頃を見計らって
義父が送ってくれた。
そもそも東京生まれ東京育ちの僕にとって
テンプラは天ぷらであって衣がついている。
こうした食べ物はさつま揚げと呼ぶ。
しかし、さつま揚げは薩摩であり、
薩摩はもちろん鹿児島だ。
関西人の誇りがどれもこれもさつま揚げと呼ぶ
関東人のおおざっぱさを許さない。
天ぷらうどんを関西で頼んだら
衣をつけて揚げた天ぷらがのっているのか、
すり身を揚げたテンプラがのっているのか、
注文したものがやってくるまで予断を許さない。
テンプラは品質をごまかそうと思えば
いくらでもごまかせる食品だ。
安い魚を使って、小麦粉を放り込めば量も稼げる。
保存料を入れておけば、持ちもよい。
したがって、買う店の信用がなにより大事になる。
義父は僕が帰る週末に合わせて、
一日前に店に注文に行く。
水穂は親父がひとりで揚げているので、
揚げるたびに客が次々と買っていく。
店に来てくれた客を待たせるわけにはいかない。
だからその日に頼んだのでは
僕に送るだけの枚数が稼げない。
送るには、揚げたての熱を冷ます時間も当然必要になる。
そうして届くテンプラだ。まずいはずがない。
徳島は瀬戸内海の小魚に恵まれる土地である。
その気になれば、仕入れの値段が合えば、
材料には事欠かない。
テンプラが届くと近所に住む副会長にも
きっちり届けて表敬の意を欠かさない。
コミュニティは持ちつ持たれつを基本とする。
一枚のテンプラには食品疑惑が忍び込む隙もない。