親方はつらいよ



高砂浦五郎「親方はつらいよ」(文春新書)を読む。
タイトルがいい。タイムリーである。
腰巻きがまたいい。
「特別寄稿 朝青龍、渾身の反省文付き」。
朝青龍の切り抜き顔写真に
吹き出しセリフが付いている。
「親方、本当に申し訳ありませんでした!」。
これだけでグッと読みたくなってくる。
今年の腰巻き大賞候補に推したい。


親方はつらいよ (文春新書)

親方はつらいよ (文春新書)


そもそもは「週刊文春」の人気連載、
阿川佐和子の対談に高砂親方が登場したのがきっかけ。
それに目を付けた新書編集者がこの本の企画を思いついた。
書名は、高砂親方が大好きな映画、
男はつらいよ」のもじりである。


スイスイ読めるが、
親方、なかなかの理論派で弁が立つ。
一連の朝青龍騒ぎを振り返りながら
親方としての自分の考えをきちんと披露する。
相撲協会時津風新弟子急死事件についても
逃げずに堂々と意見を述べている。
あの頃、朝青龍高砂親方
さんざん叩いていたマスコミの言い分とバランスを取るためには、
少し時間を置いたこの時期に当事者の話を聴いてみるといい。


この本も以前デジタルノートで紹介した新書、
パラダイス鎖国」「おもてなしの経営学」のようにブログ的である。
印刷された新書でありながら、インタラクティブなのだ。
そう言えばタイトル、腰巻きもブログ的であり、
読者とのインタラクティブな関係を作るのに効果を発揮している。
昨今の新書ブームは新書がブログ的であることと関係があるのか。


親方が現役の朝潮だった頃、
綱取りをめざしながらもなかなか勝てない場所があった。
マスコミも当然の如く、そんな朝潮を叩く。
折りも折り、まだ場所中だというのに
銀座のど真ん中で取り巻きを引き連れた朝潮関に出会った。
朝潮の顔を見て思わず声が出てしまった。
「あ、朝潮だ」。
そのときの彼の反応がよかった。
僕に向かって軽くウィンクして一言、
「ナイショだぞ」。


以来僕は朝潮関、現高砂親方を贔屓にしているのだ。