ある書店の閉店のお知らせ



銀座に寄ったついでに本屋に行こうと思ったら、
そうだ、旭屋書店銀座店は4月に閉店していたんだ。
築地で働いていたときも、銀座にいたときも、
ここにはずいぶん世話になった。
新聞記事で閉店を知ったとき寂しい思いをしたものだ。


アマゾンなどバーチャル書店が充実してきて
例えば最近読んだアンディ・グローブの著書を全部買おうと思えば
あっという間に注文することができる。
以前だったら絶版になった本は古書店で偶然見つけるしかなく、
それはそれでうれしいものだったが、
読みたいときにすぐ手に入れることは夢だった。


けれど、僕はリアル書店(ヘンな言葉ですね)の楽しさを
捨てることはできない。
本屋独特の紙やインクの匂い。
どの本を買うか決めずにブラブラ歩いて
思いがけない本に出会う喜び。
書店によって並び方や推薦本が変わり、
店員の実力や思いが伝わるうれしさ。
こうした長所はバーチャル書店にはない、
リアル書店独自のものである。


リアル書店を閉店させないためには、
そこでときどき本を買い続けるしかない。
それも自分が気に入った店でちゃんとお金を使うことが
自分の意志を示すことになる。
本のことを知らず愛さず、
質問してもなにも答えられない店員が働く本屋は味気ない。
商売の努力をしない店は淘汰されてもやむを得まい。


けれど、リアル書店とバーチャル書店は共存共栄こそ望ましい。
僕はこれからも二種類の本屋を行ったり来たりする。
もちろん神田の古本屋も忘れず訪ねることにしよう。
大人には大人の楽しみが何種類も必要なのだ。