シネマ歌舞伎と金メダル


目黒で山田洋次監督、中村勘三郎主演のシネマ歌舞伎
『人情噺文七元結(もっとい)』の試写を観た。
舞台の再現を映画でどうするんだろうと疑問を持っていたが
すばらしい出来映えだ。
テレビでよくある類いの舞台中継とはまったく違う。
映画表現として楽しめた。
山田監督は望遠レンズを使わずスタンダードにこだわる。
脚本の補綴もする。
ロングショット、アップショットを
観客の呼吸に合わせて使い分ける。
勘三郎の熱演に涙腺がゆるむ場面もしばしばだった。


舞台は生が一番という僕の信念はそうそう揺るがないが、
それでも見逃した舞台、チケットが取れない舞台、
あるいは舞台がはるか彼方にしか見えない座席だった場合、
シネマ歌舞伎は、観客にとって確実にもうひとつの選択肢になる。
もちろん、監督、カメラ、照明などスタッフの実力がなくては
見応えのある作品にならないことは言うまでもない。


ちょっといい気持ちになって一杯呑みたい気分になり、
偶然見つけた「丸冨水産」に寄り道。
みんな楽しそうにやっている。
店自体が舞台のセットだね。



ちょうど女子ソフトボールの決勝戦を中継していて目が離せない。
つまみを何品かと、幻の酒に魅かれて「白金ホイス」を注文した。
「白金ホイス」。ネーミングが素晴らしい。
ロシアウォッカズブロッカ」をベースにトウヒ、チンピの漢方、
南米の強壮成分、ワイン、リキュールが加わる。
白金で作られている国産の酒である。
ホイスはホイスキー、つまりウイスキーが語源。
なにやら酔いながら身体によく、しかも強壮作用が期待できる。
夢のような酒ではないか。


試合はとうとう上野投手が投げきりアメリカに勝利して
日本がどうしても欲しかった金メダルを見事獲得。
勝利の瞬間、店の客からいっせいに歓声が上がった。
もちろん、僕も雄叫びを上げて喜びを表した。
日本は女子が頑張るねぇ。
もともと卑弥呼の国だもんねぇ。


シネマ歌舞伎文七元結』と女子ソフトボール金メダル。
目黒の夜は、白金ホイスな夜になった。


シネマ歌舞伎文七元結』は
 10月18日から東銀座・東劇などで公開)