Only the Paranoid Survive


アンドリュー・S・グローブインテル戦略転換」
(原題:Only the Paranoid Survive/佐々木かをり訳)を読む。
グローブ自身の1997年の著書である。
梅田望夫さんの推薦図書の一冊で以前から気になっていたが、
テドロー教授の「アンディ・グローブ」(上下)を読破して勢いがつき、
ようやくこの本までたどり着いた。


インテル戦略転換

インテル戦略転換


インテルがメモリを作る企業からマイクロプロセッサを作る企業に
転換するとき、グローブがどう考えどう行動したか。
その結果、どんなことが起きたか。
グローブ自身の言葉で知ることができる。
企業経営者が現役のときに客観的に自分の決断・行動を著述したり、
ビジネススクールで講義する例はほとんどない。
その多くは引退後にゴーストライターの手になる美談であり、
本質的な失敗に触れることもほとんどないものだ。


この本が、そうした自慢話に終わらないのは
グロープの幼少期からの特質や、故郷ハンガリーでの体験、
家族とちりぢりになり身一つでアメリカにやってきた経歴とも
関連がありそうだ。
真の知性は、内に情熱を秘めながら自らをも客観視できる。
そしてそうした知性はめったには存在し得ない。


この本の最終章、第9章は
「インターネットはノイズか、シグナルか」と題され、
まるまる一章、インターネットについて書かれている。
ふむふむ、なるほどと読みながら、
この本が1997年に書かれ、
この章にもその後いっさい手を入れていないことを思い起こすと
11年後を予言するビジョナリ−としてのグローブの姿が見えてくる。
グローブ自体はビジョナリ−と呼ばれることを嫌っているらしいが、
いずれにせよ彼のインターネットに関する予言は
ほとんどすべて当たっていたことが2008年のいま分かる。
読書は過去の著者との対話である。


グローブの著書はまだ数冊残っている。
しばらくは読書テーマのひとつとして
集中して取り組んでみることにする
(読書テーマはいつも複数同時進行させている)。


僕は日本語タイトルより英文の"Only the Paranoid Survive"
(極度の心配性だけが生き残る)の方が遥かにピンとくる。
原書ペーパーバックも手に入れたので併読する考えだ。