人柄が翻訳するメッセージ


審査が終わった。19時までかかった。
採点し終えてもう済んだかなと思うと
また一点一点議論して審査結果を確認する。
これ以上、精度の高い審査はできないだろうな
と思ったとき、審査が終わった。
このしつこさは見習うべきですね。



(写真上。審査で使った入力リモコン装置。
 グリーンが入選。レッドが落選。
 自分の会社が関わった仕事はブルーを押して保留する。
 意外とシンプル。
 でも、しょっちゅう不調になり、
 押したのに事務局のPCに記録されない。
 そのたびに、"Yukio、ボタンを押して"と催促される。
 したがって、おちおち舟を漕いでもいられない。
 ボタンをしっかり押しすぎて
 審査が終わったら人差し指が痛くなった)


ところで、
クライアントはクリエイティブの人間を
もっと大事にすべきだろう。
製品もブランドもスポークスパーソンがいなくては
メッセージは期待したようには伝わらない。
社長や株価が伝えられるメッセージもあるが、
クリエイティブのチャネルを通さなくては
伝わらないメッセージがあることを知るべきだ。


そんなことを思うのも、
こうして審査していると審査員の人柄の魅力に
いつも惹かれるからなのだ。
本当に、みんなわがままでチャーミング。
もちろんクリエイティブの人間は気まぐれであり、
自分勝手な一面もある。
ビジネスの言語だけで付き合うのは難しい。



(写真上は審査員仲間のVerity(左)とCorey。
 二人ともニュージーランドオークランドで仕事をする
 Kiwi=ニュージーランド人の愛称)


しかし、ブランドの言葉は
いったん人間の言葉に翻訳しなくては他の人間には伝わらない。
クリエイティブの人間は翻訳者なのである。
血の通った言葉が欲しければ、
彼ら彼女らの力を借りる必要があるのだ。
クリエイティブの人間は
そうしたおのれの言語が錆びつかないよう日々修練せねばならぬ。
どの道もまことに厳しい(と、ここだけちょっと池波正太郎風)。


審査が終わってカクテルパーティに顔を出す。
見知った顔がいたので話しかける。
しばらく数人と雑談するが、
食べ物が豊富にあるわけでもないので、
頃合を見計らって腹を満たしに会場を出る。
初日に見つけていたFish Faceに行ってみる。



なるほど刺身はうまいし、
シェフは本わさびを使っていると現物を見せて自慢する。
輸入かしらね。
枝豆、刺身盛り合わせに、
白ワインとガーリック・トーストの注文だから
よく考えればおかしな取り合わせかもしれない。
ともあれ、おいしかった。


帰りにジェラートの店に寄って
マサラといちじくのアイスクリームを買う。
今夜は解放感があるんだろうね。
普段はアイスクリームはめったに食べないんだけれど。


(写真下がジェラート専門店。
 数十種類のめくるめくアイスクリームを揃える。
 女性のお客さんばかりで、店員もすべて女性)



11回目の海外審査が終わった。
アウェイの試合はともあれ楽しい。目が開かれる。