鉢洗いに見る地域社会



秋のお祭りのときに心ばかりの御神酒代を寄付したところ
鉢洗いに呼んでいただくことになりました。
鉢洗いとは祭礼の後のおつかれ会です。


どこの町内でもそうなんでしょうが、
裏方をボランティアでやる人たちは年々減っていくし、
地元の商店街も以前と比べれば数は少なくなっています。



神輿や山車が来たときにこの商店街でも
飲み物、食べ物を用意してねぎらいます。
そうしたものを用意するには先立つものも要るし、
人の手も必要になります。
いまの地域社会はそういうわずらわしさから逃れる人が普通でしょう。
僕だって世話役をやっている酒屋S屋のご主人から
熱心に誘われなかったら
きっと鉢洗いに出席するのをさぼっていたに違いありません。


近くには200世帯以上入る予定の大型マンションが建築中です。
祭礼のときにビール、お菓子目当てに集まってくる
大人、子どもはきっと増えるでしょうが、
自分が率先して祭りを支える人が増えるとはなかなか思えない。
商店街のおじさんたちの会話を聴いていると、
現代社会の縮図を見ているような気持ちになります。



それでも、この町内会は女性陣が
手作りの料理をふるまうことで好評です。
中にはコンビニエンスストアのおにぎりですませる町内会もあります。
女性たちが高齢化した町では
手料理をつくる人たちが減ってきているからやむを得ないのでしょう。


僕も会社をリタイアするときがくれば
地域で生きていくことになります。
会社は命令で人が動く営利組織ですからその点はハッキリしています。
善意で成り立つボランティア組織ほど
他人に命令するわけにはいかないから
案外動きが鈍くなったり、責任範囲がぼやけたりするものです。


鉢洗いには酒屋のSさん以外にも
いつも弁当を買う魚屋のUさん、
アロウカナの卵を買っている造園業のYさんの顔も見えました。
御神酒代の寄付をきっかけに
地域社会の問題を垣間みる一夜になりました。