東京日常劇場とWeb2.0


休日だというのに
同居人がiMacの前でせっせとなにかやっている。
YouTube市川準さんの作品集をアップロードしているのだ。
いまではレアになった「市川準の東京日常劇場」、
来春ユーロスペース他で公開される遺作
「buy a suit スーツを買う」予告編、
市川さん演出の傑作CMなどがまとめて観られる。


  http://jp.youtube.com/user/jun1river


アップロードしたとたんYouTube
今週もっともチャンネル登録した人が多いサイトに
選ばれてしまったのだ。
     [#90 - Most Subscribed (This Week)]



市川さんの作品をまとめて観たいと思い立っても
DVDになっているのはまだ後期の作品だけだ。
テレビで追悼上映をいずれやるかもしれないが
待っているほどみんなヒマじゃない。
第一、スポンサーがつくかどうかも怪しい。


そんなとき、こうして自主的にYouTube
作品をアップする人(この場合は同居人)がいて
他の映像共有サイトにもあっという間に広がってゆく。
これが、Web2.0のコミュニケーションである。



人は観たいときに観たいものである。
マスメディアはそのスピードに追いつけない。
まして放送するためには莫大なお金が必要だ。
そのためにはまずスポンサーを説得しなくてはならない。
Web2.0のコミュニケーションは基本的にタダであり、
必要なものは時間とボランティア精神と少々のIT知識である。



インターネットにまつわる悪意以上の善意が
こうして本来なら忘却のかなたに消えてしまう作品群を救う。
僕はWeb2.0における群衆の善意、知恵を信じる者である。
と同時に、人々の希望や関心に
マスメディアが追いつけない時代に生きている認識を持つ。
そのことは広告という
マスメディアのど真ん中で仕事をする僕たちにとって危機を意味し、
同時に次の時代の可能性の萌芽を意味している。