寺田ヒロオとJ.D.サリンジャー


市川準監督トキワ荘の青春』を観る。
DVDにはまだなっていないが
YouTubeで13本に分割されていて観ることができる。
地味だが滋味のある映画だった。
それは主人公である寺田ヒロオの人柄のようだった。


  wikipedia:寺田ヒロオ



僕はマンガ家になりたいと思っていた時期がずいぶんあって
寺田の代表作『スポーツマン金太郎』『背番号ゼロ』
『暗闇五段』など少年の頃に何度読み返したか分からない。
寺田が亡くなる前に編集した『漫画少年史』も以前購入したのだが、
引越しの際に処分してしまったのか、見当たらない。


The Catcher in the Rye

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キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

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寺田ヒロオ
J.D.サリンジャーに匹敵する作家であると僕は思っている。
寡作であり、その芯に純なものが本質として存在し、
それが故に浮き世が生きづらい。
一途で不器用な生き方は
世間の物差しと合わせていくのがさぞや難儀であろう。
ふたりともある時期からピタリと創作活動をやめ隠遁する。
しかし、作品や人柄に触れた人は生涯忘れ難い。
僕にとって寺田とサリンジャー
同質の感動とともに記憶している作家である。


  wikipedia:en:J.D.Salinger



市川監督の手によって
青雲の志を持つマンガ家たちの梁山泊トキワ荘
映画化されていたことは無論知っていた。
自分にとって少年期のかけがえのない世界であったために
これまで観ることはなかった。失望したくなかったのだ。
なるほど、市川作品は興行的成功をおさめる作品ではないかもしれない。
けれど、10年後、20年後に誰かが観て
寺田ヒロオ市川準のことを想うかもしれない。



この作品を観たことをきっかけに
寺田ヒロオのことを調べてみた。
全作品の復刻が計画されているようで、
まずは三冊出版予定の『スポーツマン金太郎』を予約した。
こうした計画はおおいに支援したい。


なんせ、寺田の旧作をアマゾンで手に入れようとしても
プレミアム価格がついていてとても手が出ない。
ぜひ、『背番号ゼロ』『暗闇五段』など
寺田がある時期、心血を注いで書いた作品を
続いて復刻してもらいたい。