NHKラジオ語学講座09上半期レビュー(その4)


<英語の巻3>



「入門ビジネス英語」(通年講座)
 (エド・スミス/藤本ケイ/デイヴィッド・ネヴィン/金井真努香)


テキストを執筆するスタッフ2名、放送するスタッフ2名。
4名で1チームとして運営していく英語講座。
このチーム方式は昨年度から採用された(スタッフは一新)。
国際的な活動をしている会社で
英語が共通語としてどんなふうに使用されているか丁寧に紹介している。


今年は特にボキャブラリーの充実に焦点を当てていて、
単語として記憶するだけでなく、
状況・コンテキストに応じて記憶していけるように構成されている。
英語を英語で解説するコーナーも役に立つ。



昨年の講座に比べると、
ストーリーの面白さがやや不足している。
人物の葛藤があまり描かれていないため感情移入するのが難しい。
入門教材でストーリーテリングまで要求するのは酷だとは思うが、
内容に興味を引かれれば自然と英語修得もはかどるものだ。
その点を新チームの下半期の仕事に期待したい。



「実践ビジネス英語」(通年講座)
 (杉田敏/松下クリス/岩本スーザン)


僕が9年前に
NHKラジオ講座に復帰するきっかけを作ってくれたのがこの番組。
なんせ内容がべらぼうに面白い。
杉田先生は現役のPR会社社長であり、
アメリカ生活時代、新聞社に勤めていたこともあり、
とにかくビニエット(寸劇)のテーマが最新であり、
切り口が素晴らしい。


例えば韓国の自動車会社がアメリカで新車を購入するとき、
失業した場合はディーラーが引き取ってくれるPRキャンペーン
取り上げる。
世界的経済不況の中でメーカーが生活者と関係を築くために
必死の努力をしている姿勢がよく分かる。



実はこのキャンペーン、
今年のカンヌ国際広告祭PR部門で受賞した仕事である。
こうした話題を語学教材にいち早く取り入れる同時代感が
僕がこの番組で一番評価している点である。
先生の講義を聴いていると語学の勉強には終わりがないことを知る。
それは生涯を通じて学び、楽しむ道が存在している証明でもあるのだ。


(文中一部敬称略)