裏を返しに「天★(てんせい)」

夕暮れ時にそぞろ歩きするにはまたとない日だった。
裏を返しに東高円寺の日本酒居酒屋
「天★(てんせい)」を訪れることにした。


東京コピーライターズストリート・ライブ応援団長として
同居人、副会長をこの店で励まそうと計画しているが、
人をもてなすからには、その前に自分自身で
責任を持って体験・取材しておくのが礼儀にかなっているだろう。
そんな理由にかこつけて再訪した。



帰宅する地元民に混じって蚕糸の森公園の中を通り抜け、
まずは杉並28番・さくら湯に向かう。
銭湯と商店街を見て、地元の人たちの会話に耳を傾けていれば
このあたりが暮らしやすい土地であることがよく分かる。
湯上がりの肌に当たる風が心地よい。
「天★」のカウンター、
ビールケースに座布団の椅子に腰かける。



一本だけ残っていた湘南ビールのヴァイスをいただいた後は
ご主人のHさんにお任せして
一度に2種類ずつの日本酒を選んでもらう。
この店は半合ずつ出すのでこんな真似ができるのだ。


ご主人も常連のみなさんも「へぇ〜」と感心していたから、
こんなことをするのは僕が初めてのようだ。
大魔王のワインバーで白赤3種類ずつのワインを試飲して
個性を比べるのがとても愉しい。
自分の味覚に合った銘柄を見つけることもできる。
それを日本酒でもやってみたかったのだ。



  (左「ど・PINK」、右「花陽浴(はなあび)」)


第一ラウンドは陸奥の酒、「八仙」を2種。
店主自慢の限定品。同じ蔵でも確かに味が違う。
第二ラウンドは「にごり」に変えて、
秋田・白瀑(しらたき)醸造「ど・PINK」(色は紅麹による)と
埼玉・羽生の南陽醸造「花陽浴(はなあび)」
色が紅白揃ってなんともめでたい。
正月やお祝いのときにこうして半合ずつふるまえば
飲兵衛ならきっと喜ぶに違いない。


「天★」では和らぎ水として井戸水を一升瓶で出してくれる。
なんでも飲んだ日本酒の倍、和らぎ水を飲んでおけば
悪酔い、二日酔いがないのだと言う。酒飲みの知恵である。



  (我が家の食客猫、ハエタロウに似ている)


確かにうまかった。
うまかったし、和らぎ水もたっぷりいただいたのだが、
それでも家の玄関にたどり着いたとき、
あやうくそのまま寝てしまいそうになった。
春のにごりはよく回る。