中島らも『今夜、すべてのバーで』(1994文庫/1990初出)


中島らもと言えば失礼ながらアル中の作家で
アルコールが原因の事故で死んだというイメージがほとんどだった。


今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)


代表作『今夜、すべてのバーで』を読んだ。
タイトルがいい。
らもの作品はタイトルがすべてキャッチフレーズになっている。
実体験とアルコール中毒に関する資料を駆使して書いているが、
思いがけず読後感がよかった。
主治医の赤河、事務所のマネジャー天童寺さやかなど
脇の人物がよく書けていて、物語にスッと入っていける。


せんべろ探偵が行く

せんべろ探偵が行く


らもに再注目したのは
十条の斎藤酒場について短いエッセイが掲載されている
『せんべろ探偵が行く』(小堀純と共著)を読んだのがきっかけだった。
とても上質な筆さばきだったのだ。
朝日新聞に連載していた『明るい悩み相談室』も並行して読んでいる。
ギャグ満載の答えでありながら、
寄せられた質問を決して茶化していない姿が文章からうかがえる。


甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)


文庫ではらもが敬愛する作家・山田風太郎との対談が載っている。
山田はこの作品の質の高さを評価しながら、
らもにギャグ路線も捨てないようにと助言する。
らもがコピーライターだった頃、
カネテツデリカフーズのカベ新聞風広告があった。
東京コピーライターズクラブ新人賞選考から漏れたその作品は
他のどの作品とも違っていてギャグ満載だった。



(文中敬称略)