「斎藤酒場」でネジをゆるめる


やれやれ、一週間分の仕事が終わったぜ。
月曜が祝日だったから実働4日だが、
そろそろ正月休みの感覚も抜けて、
いよいよまた大波小波、ときに荒波を航海するんだなぁ、
ボヤボヤしてると船が難破しちまうぞ、
と気持ちが引き締まる。
とは言え、「緊張と緩和が大切」とは桂枝雀師匠の教え。
ちょっと時間も遅くなったが、十条の斎藤酒場に向かう。



電車の乗り継ぎがうまくいって、会社から40分で着く。
顔見知りになったおばちゃんのひとりが、
「あら、久しぶりね。たまには寄ってくださいね」
と声をかけてくれるのがうれしい。
今年初めて来たので、新年のあいさつをする。
常連とまではいかないものの、
斎藤酒場の「共同お茶の間」(と僕が命名)に
時々現れる客くらいにはどうやら覚えてもらえたようだ。


サッポロラガー、通称「赤星」から始める。
つまみは、せりのごまあえが売り切れになっていたから、
肉豆腐、長芋のうす正油をもらう。
どれも200~300円くらいで、ひと手間かけた料理である。
自然木のテーブルに相席して
頭のネジ、身体のネジ、心のネジ、あちこちのネジをゆるめ出す。
自分でやるオーバーホールですな。



斎藤の「共同お茶の間」は人間模様が面白い。
聴くともなく会話がとぎれとぎれに入ってくる。
となりの中年の男女は女性がなかなかインテリで、
会話の端々に「Twitter」「Japan Times」などの単語がはさまれる。
メガネのおじさんは日本酒を飲みながら黙ってそれを聞いている。
勘定は女性が支払っていった。
なんとなく二人の力関係がしのばれる(妄想失礼)。


みんなが相席する「共同お茶の間」ではあるが、
そこはかとなく品位が保たれているのが名店のあかしだと僕は思う。
大声で話す人もなく、相席した人間にむやみに話しかける客もいない。
珍しくテーブルでつっぷして寝ている若者がいたら、
おばちゃんが連れの客に「寝るのはおうちでしてくださいネ」
と優しく諭していた。みんなで店の雰囲気を創りあげているのだ。
お金さえ払えばなにをしてもいいという訳ではない。
大人同士の暗黙のルールがある。



帰りの駅で吉永小百合さんのJRのポスターが目に止まった。
三日間で12,000円。新幹線も普通の列車も乗り放題の切符。
「大人の休日倶楽部会員パス」。
なんだか旅に誘われるね。
きょうは朝から一日気温が低かった日で、夜風が冷たい。