進化の光と停滞の闇


毎年とても楽しみにしている文化庁メディア芸術祭入賞作品展が
2日から六本木・新国立美術館で始まった。
今年で第14回。
いっぺんではとても見切れないので、
きょうはおおざっぱに俯瞰して眺め、
いくつかのカテゴリーについては一点ずつ見たり体験したりした。
会期中にあと何度か行くつもりである。



デジタル技術が当たり前になって
イデアや創造性がより重視されるようになった
という審査員たちのコメントを多く見かけた。
元気なカテゴリーと停滞しているカテゴリーがある。
入賞、もしくは審査委員会推薦作品、
この展覧会を訪れる人たちの顔つきや様子を見ていると、
ここには日本の希望の光が射し込んでいると毎年思う。



メディアをテクノロジーによって創造し、
イデアで人が体験できるカタチについては
日本も東京もたいした磁力を持つ場なのだ。
それは日本人に限らず、
例えばアート部門では既に30%が海外からの応募である。
東京におけるメディア芸術の国際化は
この4、5年で一気に進んでいるのだ。
そうした時代の流れを抽象的に捉えるだけでなく、
具体的な一点一点の作品で認識、体験できることに
この展覧会の最大の価値があると僕は思う。



ところで。
ここにやってきて写真を撮ろうと思った矢先、
突然のようにデジタルカメラの液晶が七色の虹を発光させ、
やがて機能不全になった。不注意で落とした訳ではない。
夕方、このカメラを購入した大手電気製品店Lで相談してみると、
液晶の故障は突然起こると言う。
突然が当たり前なのだ。故障の理由もたいがい分からない。
修理に出すのも、型落ちしかかっている現製品を新規で購入しても、
ほとんど費用が変わらない。
つまり、「使い捨てなんですよ」と言われているのだ。



新型を買えばバッテリーも充電器も
Macに接続するコードもすべて変わり、
これまでのものは使えない。
確かに機能として進化している箇所もある。
けれど僕のようにブログやスライドに圧縮データを使うことが
使用目的のほとんどであれば、
いまさら追加機能などさして必要としない。
日々のヘビーユースに耐えてくれることが肝心だ。



こうした不便はどのメーカーも同じである。
環境や資源の有効利用が叫ばれても
経済活動、消費活動の足下は相変わらず危うい。
カメラを使用し続ける意志を持つ限り他に選択肢も見あたらず、
その場で四代目のデジタルカメラを購入した。
テクノロジーと創造性について
進化の光と停滞の闇の両方を体験した一日だった。


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メディア芸術祭入賞作品展は、2月13日まで開催。
平日18時まで、金曜日20時まで。入場無料。
今年はUstreamライブ配信もあって
家にいながらにして各セッションが楽しめる。
現場に行けないみなさんは下線部をクリックして
公式サイトからUstreamを訪れてみてください。