池井戸潤『オレたちバブル入行組』(2004/2007文庫版)


直木賞作家に望むことはなんだろうか。
僕の場合、物語の面白さが一番である。
仕事や人間関係などで少々疲れたときに、
頭と心のこりをほぐしてくれるストーリーテリング
活字の妙薬を求めている。


オレたちバブル入行組 (文春文庫)

オレたちバブル入行組 (文春文庫)


池井戸潤『オレたちバブル入行組』を読む。
主人公・半沢直樹は東京中央銀行に勤める男。
根は性善説だが、やられたら倍返しが信条。
正義感とヒールぶりが網の目のようにからみあう人格設定だ。
もちろん「やられたら倍返し」が物語を面白くする。



半沢と同期入行の渡真利、近藤らが
大組織の中でときに助け合い、大悪党・小悪党らに倍返しする。
元銀行員・池井戸が得意とする企業小説。
銀行業務のディテールが随所に書き込まれ、
痛快無類の小説にリアリティを与えている。
下町ロケット』のように賞を取る類の作品ではないが、
その分、気楽にスイスイ読める。僕は好きだな。


(文中敬称略)