図書館に寄って帰る金曜日


金曜日。
やれやれ一週間分の仕事を終えたわい、
MacBook Airをロッカーにしまう。
翌日も出社するので今週も週末は半分だけである。
せめて、ちょいと息抜きに図書館に寄って帰ろう。
二両編成の東急世田谷線に乗って、
三軒茶屋の次の駅、西太子堂で下車する。
全部で10駅しかない路線である。



「からきや」。
そこが僕の通う図書館である。
外見からは変哲もない町の酒屋としか見えないが、
店の奥に「唐木屋のなか」と呼ぶ角打ちがある。会員制である。
図書館は図書館でも、ここは「酒の図書館」。
ご主人、奥さんは司書であり、
小さな蔵や醸造所から厳選して酒やビールを仕入れている。
したがって蔵書(蔵酒か)についてはなんでも知っている。
震災で被害を受けた東北三県の蔵についても状況をつかんでいて
店の売上げから寄付を続けている。



湘南。富士桜高原。オリオン。
ご主人が厳選した地ビールの生が平然と置いてある。
こんなことは大手の店だって簡単にはできないよ。
僕はオリオンを半パイント、
富士桜高原のドゥンケル・ヴァイツェンを後から1パイント頼む。


週ごとに3種の日本酒を選び、各60mlずつ飲みくらべさせる。
それぞれがどんな酒か、スペックが記された紙に三つの猪口が並ぶ。
気に入れば追加注文もできるし、瓶で買って帰ればよい。
今週は岐阜・中島醸造の「小右衛門」2種、「うすらひ」の飲みくらべ
「唐木屋のなか」は食べ物の持ち込みが許されている。
僕も店のチーズや渋谷のFood Showで仕入れた漬け物で酒を飲む。



小林秀雄が「戦前の東京にあった、うまい酒を安く飲ませ、
静かに思索できる居酒屋はないものか」と嘆いていた。
存命であれば、「唐木屋のなか」に一度お連れしたかった。
ここには静寂と酒がある。


この夜は韓国人女性客ふたりが後からやってきた。
ひとりは1リットルのドゥンケル・ヴァイツェン
ジョッキで豪快に飲んでいる。
もうひとりは並んだ銘酒から好みの酒を試飲(60ml)で注文している。
そこへ成田に到着して店に直行した三人目が加わった。
せんべいをかじりながら閉店まで三人で楽しそうに飲んでいた。
異国に暮らしながら、
こうした場所を見つけて通うのはたいした生活力であるな。



きょうは広島原爆記念日
あれから66年が過ぎた。
合掌。