城山三郎『そうか、もう君はいないのか』(2008/2010文庫版)


城山三郎『そうか、もう君はいないのか』を読む。
同じ著者の『どうせ、あちらへは手ぶらで行く』
(2009/2011文庫版)を先に読み、本書も読みたくなった。


そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)


終生の伴侶であった容子さんとの出会いから別れ、
そして死別してからの暮らしを綴った本である。
どちらもタイトルがよい。
残された城山の文章から編集者が選んだものである。
仕事と伴侶。
それ以外になにを望むか。


どうせ、あちらへは手ぶらで行く (新潮文庫)

どうせ、あちらへは手ぶらで行く (新潮文庫)


容子さんとの名古屋の図書館の出会いから、
容子さん、息子さん、著者の病院での最期のエピソードまで、
小説家でもなかなか書けない物語だ。
いや、それとも、生きること自体が
自分の物語を綴ることなのか。


この本で初めて城山を知り、
それがきっかけで他の小説も読むことになった女性読者が多い。
硬派であっても男はハードボイルドだけではダメなのだ。
「優しくなくては生きている資格がない」。
ハンフリー・ボガードも言っている。


(文中敬称略)