宮崎市定『中国史(上)』(1977)


7月に上海、8月に北京、9月に瀋陽に行き、
あらためて中国の持つ熱気と混沌のダイナミズムに興味を持った。
自分が日常で体験する断片だけでは中国はとても理解しきれない。
宮崎市定『中国史(上)』を読む。


中国史 上 (岩波全書 295)

中国史 上 (岩波全書 295)


   この小著もそうであるが、私が近頃発表するものは、
   世のいみじき学匠達に捧げるものではない。
   私の性分はそういう既知数にはあまり魅力を感じない。
   私は将来ある若い世代を相手に学問を語りたく思う。
   これから学問を始めようという人は、
   計り知るべからざる未知数である点において私の関心を惹く。


                (同著「はしがき」ivより引用)


国史は国の名前、個人の名前が煩雑であるが、
宮崎の著書は5,000年の中国史のコンテキストを読み解くのに役立つ。
学会の大勢に呑まれぬ碩学の入門書ほど読み応えのある書物はない。


アジア史概説 (中公文庫)

アジア史概説 (中公文庫)


国史を時系列で読んでいると、
いま現在日本、東アジアで起きている出来事も
過去からつながっていることがよく分かる。


上巻は総論から古代史、中世史まで302頁。
総論の「歴史とは何か」から「最近世とは何か」まで6節に
宮崎の骨太な歴史観が披露されていて興味深い。


(文中敬称略)