石川知裕『悪党ー小沢一郎に仕えて』(2011)


石川知裕『悪党ー小沢一郎に仕えて』を読む。
石川が「悪党」の由来をまえがきに書いている。


   「南北朝時代南朝後醍醐天皇の中心として大暴れした
    楠木正成が束ねた野武士集団をイメージしている。」

                     (p.4より引用)


悪党―小沢一郎に仕えて

悪党―小沢一郎に仕えて


佐藤優小沢一郎のことを
「平成の悪党たれ」と書いたコラムが出典だ。
これまでの小沢の側近には小沢と適切な距離を保ちながら
平易な文章で世間に政治や権力闘争を伝える語り部が不在だった。
石川は9年半小沢の秘書を務め、
その後、自身の裁判でも検察に屈することなく意志を貫いている。
そうした石川に筆を執らせた
雑誌「アエラ」常井健一記者の目線はジャーナリスティックである。
結果として本書は他メディアの小沢報道と一線を画し
真実とはなにかを自分で考える良質の材料を提供した。



この日、小沢裁判で検察官役を務める指定弁護士
大室俊三、村本道夫、山本健一の3名が
一審の無罪判決を不服として控訴を決めた。
小沢にせよ石川にせよ、国会で仕事をしていただくために
有権者として選挙で衆議院に送り込んだ。
検察が二度起訴を断念し、
検事が虚偽の報告書で検察審査会の起訴議決に影響を与え
さらに地裁の無罪判決が出た。
これだけの手間暇をかけ
これ以上の材料が出てくるとは思いにくい状況で
さらに控訴を決めるのは国民に対する挑戦である。
いまの日本にそんな遠回りをしている時間は残されていない。



小沢にも石川にも
政治の舞台で仕事をさせるのが本筋である。
日々の仕事に励み、税金を支払い、
政治を代行してもらっている市井の人間はそう考える。
是々非々は政治の舞台で本来の仕事でやらせればいいだろう。
法治国家のルールの範囲ならなにをしても構わないという
今回の一部法曹界の姿勢、判断こそ時代遅れである。
世の中の変化や有権者の意志をまるで見ていないと僕は思う。



ちなみに本書は腰巻の付いた状態のレイアウトが素晴らしい。
冒頭の写真と比較してご覧ください。


(文中敬称略)