榎本まみ『督促OL修行日記』(2012) を読む。
腰巻にこんな言葉があふれる。
「今度電話してきたら、ぶっ殺す!!」
「超ストレスフルな仕事の乗り越え方!」
「人見知りで話しベタで気弱なOKが
年間2000億円の債権を回収するまで。」
「頼みづらいことを頼む、
断りにくいことを断る!
督促OLのコミュ・テク!」
- 作者: 榎本まみ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: 単行本
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どうです、物見高い僕でなくとも
思わず手に取りたくなるでしょう。
でも単にスキャンダラスな話題を本書は追いかけてはいない。
人はなんのために仕事をするのか、
人は仕事を通じてどう成長できるのか。
ひとしきりニヤリとした後で
そうしたテーマをしみじみ考えるのにとてもよい本だった。
「おわりに」に榎本はこう書く。
私には、統合失調症で今も部屋から出られない状態の、
ひとつ年下の弟がいます。
もし、あなたが外に出られるようになって、
仕事をする時に、心と体を守るために
少しでもこの本が役に立てばと思いました。
(p.236より引用)
酷な現場で働き、
もがきながらも成長しようとしている姉の思いが
弟に通じるかどうかは僕は分からない。
反対にこうして活字で自分の病状を公開した姉を
弟が恨む日がやってくるのかもしれない。
いずれにせよ人が文章を書き本を出版する動機はさまざまである。
榎本が筆を執った理由のひとつは弟の存在であった。
本書はJ-CAST 会社ウォッチ連載コラム
「債権回収OLのトホホな日常」、
著者ブログ「督促OLの回収4コマブログ」
をベースに書き下ろされた。
コラムとブログから産まれた好著である。
目利きの編集者が存在していたのではないだろうか。
(文中敬称略)