榎本まみ『督促OL修行日記』(2012)


榎本まみ『督促OL修行日記』(2012) を読む。
腰巻にこんな言葉があふれる。


   「今度電話してきたら、ぶっ殺す!!」
   「超ストレスフルな仕事の乗り越え方!」
   「人見知りで話しベタで気弱なOKが
    年間2000億円の債権を回収するまで。」
   「頼みづらいことを頼む、
    断りにくいことを断る!
    督促OLのコミュ・テク!」


督促OL 修行日記

督促OL 修行日記


どうです、物見高い僕でなくとも
思わず手に取りたくなるでしょう。
でも単にスキャンダラスな話題を本書は追いかけてはいない。
人はなんのために仕事をするのか、
人は仕事を通じてどう成長できるのか。
ひとしきりニヤリとした後で
そうしたテーマをしみじみ考えるのにとてもよい本だった。



「おわりに」に榎本はこう書く。


    私には、統合失調症で今も部屋から出られない状態の、
    ひとつ年下の弟がいます。
    もし、あなたが外に出られるようになって、
    仕事をする時に、心と体を守るために
    少しでもこの本が役に立てばと思いました。


                     (p.236より引用)



酷な現場で働き、
もがきながらも成長しようとしている姉の思いが
弟に通じるかどうかは僕は分からない。
反対にこうして活字で自分の病状を公開した姉を
弟が恨む日がやってくるのかもしれない。
いずれにせよ人が文章を書き本を出版する動機はさまざまである。
榎本が筆を執った理由のひとつは弟の存在であった。



本書はJ-CAST 会社ウォッチ連載コラム
「債権回収OLのトホホな日常」
著者ブログ「督促OLの回収4コマブログ」
をベースに書き下ろされた。
コラムとブログから産まれた好著である。
目利きの編集者が存在していたのではないだろうか。


(文中敬称略)