岡田英弘『倭国ー東アジア世界の中で』(1977)


岡田英弘倭国ー東アジア世界の中で』を読む。
巻末倭国史年表で日本の建国周辺の年代を整理してみる。


  661年 唐・新羅百済を滅ぼす
  663年 百済・倭が白村江で唐・新羅に破れる
  667年 中大兄が都を大津に移す
  668年 唐が高句麗を滅ぼす
      天智天皇(中大兄)の即位(日本の建国)
     『近江令』の制定 天皇号の初見
  670年 倭国が名を更めて日本と号する
  720年『日本書紀』の完成


倭国―東アジア世界の中で (中公新書 (482))

倭国―東アジア世界の中で (中公新書 (482))


663年の白村江の敗北で
百済が唯一の大陸へのハブだった倭国は世界の孤児となった。
大国唐、その同盟国新羅にいつ攻められてもおかしくない危機に、
日本を建国し、天皇号を生む必然性があった。
政治の侵略は言語の侵略から始まる。
人工言語である日本語を倭に土着していた華僑を中心に創造し
大陸からの言語侵略を防ぐ必要に迫られた。



日本、日本人、日本語の特殊性を普段気軽に口にする。
けれども、それがいつ、どんな理由で始まり名付けられたか、
僕自身も深く考えてみる機会は
岡田の著書を読む以前にはほぼなかった。



現代世界でアメリカ、中国、ロシアを
もし同時に敵に回したら、どれほど怖ろしいか。
大陸の唐・新羅連合軍の強大さと
当時の倭国の非力の比較を想像してみる。
恐怖が人間集団の決断や行動の動機になることは
7世紀末も21世紀初頭も同じことなのだ。


倭国の時代 (ちくま文庫)

倭国の時代 (ちくま文庫)

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫)

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫)


岡田の同テーマの著書
倭国の時代』『日本史の誕生』との併読をおすすめする。


(文中敬称略)