エズラ・F・ヴォーゲル『現代中国の父 訒小平』(上)(2011原著/2013)


エズラ・F・ヴォーゲル
『現代中国の父 訒小平』(上)を読む。
毛沢東の時代から現代中国へ。
その変遷の原動力となった訒小平に注目してきた。
ヴォーゲルが10年の歳月をかけ綿密な取材を元に完成した大著である。


現代中国の父 トウ小平(上)

現代中国の父 トウ小平(上)


原題が内容をより精確に表現している。
"Deng Xiaoping and the Transformation of China"
訒小平と中国の変革』である。
ひとつの構造から別の構造に変化するのが
Transformationだから、まさにピタリ言い当てている。



ヴォーゲルと言えば、
1979年の著作『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が有名である。
その後、日本が経済停滞期に入るとともに、
著作自体も過去のものになったような気が僕はしていた。
ヴォーゲルは2000年、70歳の誕生日に
ハーバード大学での講義からの引退を決意した。
その後、取り組んだのが本書である。



ヴォーゲルは中国語で自ら関係者に取材する。
中国語だけではない。日本語も駆使するのだ。
知的巨人は世に存在するものだ。
本文内容の9%は削除されたものの、
2013年1月には中国でも出版され60万部が売れている。



大著であるものの、
益尾知佐子、杉本孝の翻訳もよく読みやすい。
毛沢東への直接批判を回避しつつ、
中国に資本主義を導入していく訒小平の政治力が上巻の見ものだ。


(文中敬称略)