我が輩は大王である


我が輩は猫である。
名前は大王。
いまの飼い主のメスが名付けた。


4年前のきょう午後2時46分、
我輩の故郷で大地震が起きた。
浪江町に住んでいた我が輩の飼い主たちは
地震津波原発事故が続き避難を余儀なくされた。
飼い主たちに勿論悪気などありようはずもなかったが、
帰宅することも許されず、我が輩は野良になった。



以来3年3ヶ月、軒下縁の下で雨風を避け、
狸やハクビシンに襲われぬよう逃げ隠れ、
蛇、蛙、蝉、鳥を食べて生き延びた。
縁あってボランティアに保護され、
猫カフェで自分の食い扶持を稼いでいたところ、
いまの飼い主にもらわれた。


それは、まぁ、我が輩が可愛いからである。
現にいまの飼い主のオスは我が輩を溺愛している。
人間とは他愛のない生き物だが、
いまの境遇には、それなりに満足している。
我が輩もゴロゴロなつきヒザに乗り
布団に入ってやることにしている。