三浦しをん『舟を編む』(2011/2015文庫版)


文庫本が出たのを機会に読んでみた。
三浦しをん舟を編む』。
辞書づくりに励む男と女の物語。
悪党は出てこないし、葛藤もさしてない。


舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)


普段脚光を浴びることも少ない国語辞書を世に出すために
15年の歳月を捧げる人たちがいる。
辞書を監修する松本先生の言葉が味わい深い。


   言葉とは、言葉を扱う辞書とは、
   個人と権力、内的自由と公的支配の狭間という、
   常に危うい場所に存在するのですね。


  (本書p.283より引用)


言葉を支配することは権力者の野望であるが、
その野望からするりと抜けてしまう生き物が言葉だ。
言葉を写す鏡が辞書である。



文庫のために「馬締の恋文」を全文(?)収録し、
登場人物・西岡、岸辺に欄外解説させた著者のサービス精神がうれしい。
2012年本屋大賞第1位。


(文中敬称略)