仕事師で、総理にもときに直言し、
弱い者の立場を理解しようとする政治家が僕は好きだ。
『聞き書 野中広務回顧録』(御厨貴/牧原出編: 2012)を読む。
野中は京都・町議会議員から内閣官房長官・自民党幹事長まで上り詰めたが、
この人に奢りは微塵も感じない。
後藤田正晴に通じるものがある。
- 作者: 御厨貴,牧原出
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/06/29
- メディア: 単行本
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御厨らが始めた「オーラル・ヒストリー」は手法としての斬新さより
(1)インタビュー人物の選択
(2)豊かな答えを引き出す質問、その準備
(3)回数を重ねることによる緻密
の三点に価値があると僕は思う。
本書ではその役割を主に牧原が負う。
世の中の激変、それに連動する政界の変化。
現役政治家のときにはとても発言できなかった内容が次々明かされ、
昭和史平成史の一部が開陳される。
一部と言っても、時の権力中枢で仕事した時期が長かった野中だけに、
日本の行方を決定するような場面での思考、決断、行動も明らかになる。
例えば野中が悪魔と呼んだ小沢一郎との関係にしても、
憎み通した相手ではなく時々によっての評価が異なり、その理由も明快だ。
まさかと思えた社会党との連立内閣、村山総理誕生の背景も
本書で野中の話を聴いていると僕はおおいに納得できた。
欧米では伝統ある政治家、起業家の回顧録を
日本でも歴史的価値あるものにするためにはインタビュアーの力量が要る。
そして、墓場まで持っていく秘密以外は
率直に語るインタビュイーの覚悟が要る。
成功者・実力者へのおべんちゃらは、なんの意味も価値もない。
牧原の仕事に拍手を送る。
- 作者: 後藤田正晴,御厨貴
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/06/21
- メディア: 文庫
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- 作者: 後藤田正晴,御厨貴
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(文中敬称略)