佐藤優『外務省犯罪黒書』(2015)


著者初めての自費出版である。
佐藤優『外務省犯罪黒書』を読む。
月刊誌『現代』2006年6月号から2007年1月号まで連載した
「外務省『犯罪白書』」の書籍化だ。



本書をいま世に問う理由を佐藤はこう説明する。


  (1) 55歳になり人生の残り時間を考えたとき、
   思い入れの深い文章を記録として後世に残したい。


  (2) 外務省の自浄作用、腐敗一掃が進まず、
   日本外交が危険な状態になっている。


サブタイトル、腰巻きが強烈なメッセージである。
サブタイトルは「日本国外務省検閲済」。
当時まだ外務省職員だった佐藤はルール通り、
人事課に執筆許諾、原稿事前送付を行っていた。
なので「検閲済」の言葉を使ったのだ。



腰巻きはこうである。


  「杉山晋輔外務審議官
   頑張って北方領土返還を
   実現してください。
   応援しています。


      鈴木宗男(元国務大臣)」


上質のブラックユーモアである。
本文を読めば、杉山外務審議官
鈴木宗男代議士(当時)にいかに擦りより、
いかに裏切ったか、事実に基づき明快に記してあるからだ。



本文を読み僕の印象に一番残ったのが、
国会議員の質問主意書は使い方によって
官僚のごまかしをあばくとてもよいツールになるということだ。
衆議院公式ホームページで
質問主意書答弁書全文を読むことができる。


国会議員はこうした権利を
国民のためにもっと活用してほしい。
僕たちはこうした公開情報についての知識をもっと深め、
必要に応じて閲覧する習慣を持つといいと思った。


本書は世に言う暴露本とは違う。
日本が外交の舵取りを間違えれば国益を損なう。
それを防ぐために元外交官、現作家として
できるだけのことをやるという佐藤の志が
自費出版の動機になっている。


(文中敬称略)