東村アキコ『かくかくしかじか』(全5巻/2012-15)


これは作家が一生に一度だけ描ける作品なんだろう。
東村アキコ『かくかくしかじか』(全5巻)を読む。
毎年楽しみにしているメディア芸術祭入賞作品展。
今年は全作品を網羅してやろうという野心より、
直感と偶然に頼って見る作品を絞ろうと思った。
六本木の国立新美術館を訪ねるのは今年二度目。
迷うことなく、閲覧用『かくかくしかじか』の続きを読みに行った。
漫画家・東村アキコの自伝漫画である。



これまで一度も語らなかった故郷・宮崎の師、日高先生との
出会いと別れが物語りの主軸になる。
スランプに陥る林(東村)に、私塾の教え子たちに
「描け、描け、描け〜」とハッパをかける日高先生が印象的だ。
ギャグとペーソスの転換が心地よく、
ネームがよくできている。
日高先生との思い出は甘いだけのものでなく、
痛くほろ苦いものだった。



この作品をマンガ部門大賞に選んだ審査員たちの慧眼に敬服する。
メディア芸術祭入賞作品展は六本木国立新美術館他で開催。
2月14日まで。火曜休館。金曜は20時まで。
入場無料。
簡略版ガイドブック(小冊子)を無料でもらえる(写真上)。
愛蔵版ガイドブックは税込1,500円。


(文中敬称略)