その強靱な知的体力の基盤がどうやって築かれたか、
この本を読んでいると想像が湧いてくる。
佐藤優『私のマルクス』を読む。
佐藤は生涯に三度マルクスに出会ったと告白する。
本書は一度目、二度目のマルクスとの出会いの物語を軸に
2006年から07年にかけて『文學界』に連載された。
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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県立浦和高校に通っていた夏休み、
佐藤はソ連、東欧の旅に出かける。
道中ブタペシュトに住むペンフレンド、
フェレンス君を訪ねるのも旅の目的のひとつだった。
無神論国家であってもフェレンス君の故国ハンガリーと
ポーランドでもまるで空気、人びとの生活が違う。
当然マルクスの占める位置も微妙に異なる。
高校生だった佐藤はこの旅でそうした現実を
ひとつひとつ皮膚体験で学ぶ。
金はなくとも豊富に時間を持てる
青春時代にしか不可能な、貴重な回り道の時間だ。
まさかその後自分が外交官になりソ連に赴任し、
国家が崩壊する1991年を目撃するとは夢にも思わなかった。
本書は歴史と個人が交差する偶然と必然の物語だ。
詳細な出来事、固有名詞まで記憶する方法は
外務省でインテリジェンスの仕事をしているうちに身に付けた。
10年以上、日本でトップランクの質量の著作活動をしても
源泉が枯れない秘密のひとつはこの記憶力にあると僕は推察する。
同志社大学時代を記した青春の書『同志社大学神学部』を併読すれば、
佐藤の知的源泉の入り口まで本人が道案内してくれる。
本書巻末4頁の「書名リスト」が読了後の自習に役立つ。
同志社大学神学部?私はいかに学び、考え、議論したか? (光文社新書)
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2015/11/20
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- 作者: カール・マルクス,岡崎次郎
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 1972/03
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(文中敬称略)