アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』を読み返そうとしていたら
格好の副読本が出版されたことを知った。
佐藤優『国家と資本主義 支配の構造
ー同志社大学講義録「民族とナショナリズム」を読み解く』(青春出版社、2022)。
「序章」から引用する。
本書は2021年に「同志社大学 新島塾」で行った講義をもとに、
構成したものです。
講義のテキストとして取り上げた『民族とナショナリズム』
(アーネスト・ゲルナー著、加藤節(たかし)監訳、岩波書店、2000年)は、
現代に蔓延するナショナリズムという現象を理解するために、
マクロな視座を与えてくれる格好のテキストです。
著者のアーネスト・ゲルナーは、
1925年にフランスのパリでユダヤ人の家庭に生まれ、
チェコスロバキアのプラハで育ちます。
ナチス・ドイツのプラハ占領で、1939年に家族とともにイギリスに移住し、
オックスフォード大学を卒業します。
1962年からロンドン大学の哲学教授、
1984年からケンブリッジ大学の社会人類学教授を勤めるなど、
イギリスの哲学者、社会人類学者、歴史学者として、一線で活躍しました。
ゲルナーは、ナショナリズムについて、
「産業社会の勃興のなかで、必然的に生まれてくる現象である」
と説きます。
(pp.9-10)
新島塾に参加しているメンバーは熱心で、
テキストを深く読み込んでいる。
佐藤さんとの丁々発止にやりとりで、
僕もいつしか教室の片隅で「バーチャル学生」として参加している。
「あとがき」から引用する。
新島塾とは、植木朝子同志社大学学長を塾長とする、
学部横断的な同志社大学独自の教育機関だ。
(略)
2回生、3回生で定員は各20人で、少数精鋭教育を行っている。
さらに数人のグループからなる演習コースが多数用意されている。
『民族とナショナリズム』をテキストにした読書会の時点では、
その1年後の2022年2月24日に、
ロシアがウクライナを侵攻する事態が生じるとは夢にも思っていなかった。
この事件は、第二次世界大戦後に確立した国際秩序を、
根本から崩す性格を帯びている。
この際重要なのは、ナショナリズムの力を正確に理解することだ。
(略)
(pp.238-239)
新島塾読書会に参加した7人の中に
名前を覚えている学生が2人いた。
2015年から2020年まで実施された
同志社社会人講座・佐藤優教室に
京都からリモート映像システムで出席した学生だ。
佐藤さんが育てた若者たちが社会で活躍することを
僕も強く願っている。
編集担当:赤羽秀是(青春出版社)
構成:本間大樹(フリーランス)