まなぶたが点滅してるおさなごを(小野小乃々)

クリッピングから
讀賣新聞2022年6月27日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  折り目とは違うところを思い切り
  谷折りされたような腰痛

         燕市 田巻由美子


    【評】折り目の違いだけでなく、普段は山折りするところなのだろう。
       痛みというのは人によって様々で、なかなか共感しづらいが、
       こちらまで腰が痛くなりそうなみごとな比喩だ。


  まなぶたが点滅してるおさなごを
  夢へと渡りきるまで抱く

        新宮市 小野小乃々


    【評】まもなく赤に変わる点滅信号が連想されるのは、
       「渡りきる」という動詞の効果だろう。
       行き先が「夢」というのもいい。
       寝かしつけのひとときが、豊かに伝わってくる。


  きみのバースデーケーキを予約して
  きみより先にしあわせになる

          名古屋市 木村槿


    【評】祝いごとの準備は、
       当然祝われる本人の喜びより前にスタートする。
       当たり前のことを、こんなふうに味わえたら素敵(すてき)だ。



万智さんの簡潔だが丁寧な評と一緒に
それぞれの方の歌を味わうのが僕は好きだ。