クリッピングから
讀賣新聞2020年10月26日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週も好きな歌3首、抜き書きしてみます。
(もしぜんぶあげたらきみは濁るでしょう。
うわずみだけをあげる。)さみしい。
本庄市 戸沢千幸
【評】恋愛の本質を問うた一首。
心の上澄みだけなら綺麗(きれい)かもしれないが、
綺麗ごとでしかない。
思わず漏れた「さみしい」を相手がどう受け止めるかで、
恋の行方は変わる。
カッコの使い方が斬新でした。
こんなふうに短歌を詠むこともできるのですね。
恋愛の歌には万智師匠の評がいつも以上に深い気がしました。
カッテージチーズを鍋に作る我
「国生み神話」思ひ出しつつ
結句の飛躍に驚きました。
台所でごく近くを見ていたカメラがあれよあれよという間に引いて
国を生むシーンにまで変わるとは。
夏の海波打ち際の足元は
テーブルクロス引きたる芸よ
波が引く光景を
テーブルクロスを引く動作に例えたのが心地いい。
そうか、あれも波の「芸」だったのか。
月曜日はこの欄を読みたいばかりで
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