まぼろしの靴磨きいるなり(岩元秀人)

クリッピングから
讀賣新聞2020年5月11日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


  ベランダに咲かせるように干してゆく
  風を喜ぶ春のブラウス

         平塚市 小林真希子


    【評】動詞の用い方が巧みだ。
       「咲かせる」で花を、「喜ぶ」で風の動きを表現している。
       家事も、こんな気分でこなせれば楽しい。


リズムがあって、明るくて。
たった三十一文字で自分も人も励ますことができるんですね。
春の日差しまで感じられます。


  路地裏に一人ボールを蹴る少年
  つぶやくように苛立つように

          松江市 犬山純子


学校で友だちと会えない寂しさ、苛立ちの表現でしょうか。
観察力の細やかさ、作者の少年への共感を感じました。


  逢うという架空に眠る春の夜は
  まぼろしの靴磨きいるなり

          垂水市 岩元秀人


ファンタジーのような言葉の連なりに
思わず惹かれました。
まぼろしの靴磨き」、なんとも不思議な響きです。


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